総論
・母体に存在しない血液型抗原が胎児に存在することを、血液型不適合という。
・母体が胎児の血液型にあらかじめ感作されており、この抗原に対する抗体がつくられていると、次の妊娠以降に抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、胎児貧血や出生後の溶血性疾患を引き起こす。
・病型にはRh(D)式血液型不適合 (Rh incompatibility) と、ABO式血液型不適合(ABO incompatibility)がある。
機序
妊娠1回目では、胎児の抗原が母体内に流入しても、IgM抗体が産生されるのみ。IgM抗体は分子量が大きいため胎盤を通過できず、免疫反応は起きない。しかし、抗体産生細胞(B細胞)の一部は抗原を記憶している。
2回目以降の妊娠では、胎盤から母体に入った胎児の抗原に対して、IgG抗体が速やかに産生される。IgG抗体は胎盤を通過し、胎児赤血球上の抗原と抗原抗体反応を起こす。胎児赤血球は脾臓で溶血をきたし、胎児水腫や出生後に新生児溶血性疾患を来す。
黄疸の鑑別に必要な検査
全例に施行
CBC(Hb, Ht, 網状赤血球数)、AST、ALT、LDH、TP、Alb、TB/DB
溶血が疑われる場合
血液型、直接/間接Coombs試験、不規則抗体、COHbc(一酸化炭素ヘモグロビン濃度)、末梢血スメアで赤血球形態異常を確認
黄疸が遷延する場合
TSH、fT4
直接ビリルビンが有意に上昇している場合
新生児肝炎、胆道閉鎖症を念頭に精査を進める
表裏試験について
ABO不適合の検査における「オモテウラ試験」とは、ABO血液型を正確に判定するために必須の2つの検査(オモテ試験・ウラ試験)を指します。
オモテ試験(正反応試験)
• 目的:患者の赤血球表面にA抗原・B抗原が存在するかを調べる
• 方法:患者の赤血球に抗A試薬・抗B試薬を加え、凝集(反応)が起きるか観察する
• 抗Aで凝集→A抗原あり(A型またはAB型)
• 抗Bで凝集→B抗原あり(B型またはAB型)
• どちらも凝集しない→O型

ウラ試験(逆反応試験)
• 目的:患者の血清(血漿)中に抗A抗体・抗B抗体が存在するかを調べる
• 方法:患者の血清に既知のA型・B型赤血球を加え、凝集(反応)が起きるか観察する
• A型赤血球で凝集→抗A抗体あり(B型またはO型)
• B型赤血球で凝集→抗B抗体あり(A型またはO型)
• どちらも凝集しない→AB型

• 両者の結果が一致した場合のみ、ABO血液型が確定されます。
• 不一致の場合は、亜型・疾患・移植・年齢などさまざまな要因が考えられるため、追加検査が必要です。
検査の流れ・注意点
• オモテ検査:患者赤血球+抗A/抗B試薬
• ウラ検査:患者血清+A型/B型赤血球
• 両者の結果を照合し、不一致や弱反応があれば再検査や追加検査を行う
• 例:不規則抗体検査、抗体吸着解離試験など
• 新生児や高齢者、造血器疾患患者ではウラ試験が陰性になりやすいなど、年齢や病態による影響も考慮が必要
直接・間接クームス試験
直接クームス試験(直接抗グロブリン試験)と間接クームス試験(間接抗グロブリン試験)は、いずれも赤血球に対する抗体や補体の存在を調べる免疫血液学的検査ですが、目的や検出対象、手順に明確な違いがあります。
直接クームス試験(Direct Coombs Test, DAT)
• 検出対象:患者の赤血球表面にすでに結合している抗体(主にIgG)や補体(C3)を検出する
• 主な目的:自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、新生児溶血性疾患などの診断
手順
1. 患者から採取した赤血球を洗浄
2. 抗ヒトグロブリン試薬(クームス試薬)を加える
3. 凝集が起きれば陽性(赤血球表面に抗体や補体が結合している証拠)
特徴
• 生体内で赤血球に抗体・補体が付着しているかを直接検出する
• 溶血性疾患の原因検索に有用
間接クームス試験(Indirect Coombs Test, IAT)
• 検出対象:患者の血清(血漿)中に遊離している赤血球に対する抗体を検出する
• 主な目的:輸血前の交差適合試験、不規則抗体スクリーニング、妊婦の抗体検査など
手順
1. 患者の血清と既知の抗原を持つ赤血球試薬を混合し、インキュベート
2. 抗ヒトグロブリン試薬を加える
3. 凝集が起きれば陽性(血清中に赤血球に対する抗体が存在する証拠)
特徴
• 体内で赤血球に抗体が結合していなくても、血清中に存在すれば検出可能
• 不規則抗体の検出、輸血適合性の確認に用いる
直接クームス試験と間接クームス試験の比較
・以下の表にて、直接・間接クームス試験を比較する。

補足
• 直接クームス試験は「赤血球に抗体が付着しているか」を直接調べる検査です。
• 間接クームス試験は「血清中に赤血球に対する抗体があるか」を間接的に調べる検査です。
要点まとめ
• 直接クームス試験=赤血球表面の抗体・補体を検出(主に溶血性疾患の診断)
• 間接クームス試験=血清中の赤血球抗体を検出(主に輸血前検査や不規則抗体スクリーニング)
Rh不適合
胎児管理
・すでに母体の抗D抗体が陽性の場合、妊娠後半期は2週ごとに抗体価を測定することが推奨されている。
・妊婦の抗D抗体抗体が16-32倍未満の場合、満期まで待機。抗体価の上昇が明らかな場合や16-32倍以上の場合、用水穿刺・胎児採血で、胎児貧血や分娩時期を決定する。
・MCAの収縮期最大流速値による胎児貧血の程度を予測する方法が推奨されている。
出生後管理
病的黄疸を認めない場合
・血液型、Rhのチェックのみで問題なし。しかし、生後24-48時間は頻回のミノルタチェックもしくはTBチェックが必要。
生後24時間以内に顕在化する黄疸(早発黄疸)を認める場合
・出生時、本人血で血液型・直接クームス試験を確認。ビリルビン>4mg/dL、ヘモグロビン<12g/dL、網状赤血球>40-50%、赤芽球>10/100WBCならば交換輸血を施行する。
・胎児診断例では、O型のRhの不適合型陰性血で、生後の診断例はABO式をあわせたRhの不適合陰性血を使用する。
・交換輸血後、ガンマグロブリン(intact型:ベニロン、ヴェノIHなど)1g, 1回投与
・PraaghⅠ期症状がみられず、TB値が交換輸血基準値+4mg/dL以下、UB値が1.5 μg/dL以下の場合、光線2方向と、ガンマグロブリン1gを投与し、注意深い観察を行う方法もある。
ABO不適合
・母がO型で、児がA・Bの組み合わせの場合、児の輸血前検査では表裏検査を必ず行い、裏検査で抗A抗B抗体が検出されたら、以下の検査を行う。
母体血清の抗A抗B抗体価を間接クームス試験で測定する。
児の血清の抗A抗B抗体価を間接クームス試験で測定する。
児の血球で抗体解離試験を行い、児の血球に結合した抗体価を測定する。
児の血球で直接クームス試験を行う
診断基準
・母親がO型で、児はAもしくはB型であること
・早発黄疸を伴う間接ビリルビン血症
・母親の不規則抗体が陰性で、抗A抗B抗体価が512倍以上
・児とABO同型成人赤血球による間接クームスが8倍以上、または児血球抗体解離試験が陽性。
交換輸血
・交換輸血とは、瀉血と血液製剤の輸血を同時に行う治療法である。
・ビリルビンの除去の他、血液型不適合妊娠の場合は抗体が吸着した児の赤血球や抗体そのものを除去することで、ビリルビン値を低下させる。
・光線療法だけでは効果が不十分な場合や、重篤な高ビリルビン血症を呈している場合に行われる。
・血液はO型血を使用する。
・交換輸血を考慮する場合は、感染や移植片対宿主病(GVHD)に注意が必要、ガンマグロブリンを投与する。
・交換輸血は回避できても児の間接クームス試験が8倍以上、または抗体解離試験が8倍以上なら溶血の可能性が高いので、輸血にはO型血を使用する。
方法
・末梢静脈から等量の血液製剤を等速度で輸血しながら、末梢動脈から瀉血する。
・輸血、瀉血の速度は100 mL/kg/時 を目安とし、正期産児で 160-180 mL/kg、早産児で180-200 mL/kgの血液を入れ替える。
・100mL輸血するごとにCaの補充を行う(血液製剤投与による低Ca血症の予防)


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