【小児科blog:感染症, 頭頚部】化膿性リンパ節炎について(診断・治療) | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科blog:感染症, 頭頚部】化膿性リンパ節炎について(診断・治療)

小児

Introduction

「ポコっと皮膚の一部が丸く腫れてきて、痛がるんです。」

「首を傾けたまま動かさないんです、1週間前から風邪っぽいです」

・・・・こんな症状で受診した患者さんがいれば、もしかして化膿性リンパ節炎かもしれません。

今回は、リンパ節が感染症にかかった後に腫れてくる疾患、化膿性リンパ節炎についてまとめます。

総論(原因、症状etc)

・急性+片側性の場合、黄色ブドウ球菌または溶連菌によることが40-89%
・口腔や皮膚から細菌が侵入し、求心性リンパ管によって頸部リンパ節に運ばれる。
・扁桃炎からの波及は両側性に出ることが多い。

・化膿性リンパ節炎の70-80%が5歳以下である。

・圧痛を伴った頚部腫瘤を初発症状とすることが多く、症状が進行すると皮膚の発赤熱感が認められる。

鑑別:部位

・発熱+頚部腫脹をきたす疾患には以下のものがある。

急性・両側性

・ウイルス性は急性、両側性というパターンが最も多い。

Common

・ウイルス感染症(ライノ、アデノ、インフルエンザ、ムンプス、エンテロ、EBV、CMV、HSV)

・細菌感染症(Mycoplasma, GAS)

Uncommon

・HHV-6

・パルボウイルス

急性・片側性

・細菌性の場合は、急性・両側性のパターンが最も多い。

Common

・細菌感染症(S. aureus, GAS、嫌気性菌)

Uncommon

・GBS(新生児、乳児早期)

慢性・片側性

Common

・非結核性抗酸菌

B. henslae

Uncommon

・トキソプラズマ(<3cm, 前顎)

・結核

・アクチノマイシス

慢性・両側性

Common

・EBV、CMV

Uncommon

・HIV

・結核

・梅毒

・トキソプラズマ

鑑別:疾患各論

川崎病

・他の皮膚症状や結膜充血など川崎病症状がないか注意して身体所見を取る。

・血液検査をしても、化膿性リンパ節炎との鑑別は難しい。

伝染性単核球症

・リンパ球数50%以上または5,000/μL以上、および異型リンパ球が10% 以上または1,000/μLが伝単の基準の一つだが、認めない場合もあるので注意が必要。

・また伝単もリンパ節炎同様に、CRP高値となることもある。

・最終的な鑑別には、EBウイルス抗体結果が出るまでわからないこともある。

ネコひっかき病

・片側の慢性の耳介前、顎下リンパ節腫脹と結膜炎合併はParinaud症候群を考える。

・原因の最多はネコひっかき病である。

鑑別:年齢別 原因菌の頻度

・年齢による細菌性リンパ節炎の鑑別も可能である。

新生児:GBS>S. aureus

2ヶ月-1歳:S. aureus>GBS, B. henselae

1-4歳:S. aureus>GAS>NTM, B. henselae, トキソプラズマ

5-18歳;S. aureus, GAS>嫌気性菌, NTM, B. henselae, トキソプラズマ

※上記に加えて、齲歯や歯肉、歯周囲炎に伴うリンパ節炎では嫌気性菌が関与する場合がある。

鑑別:画像検査

・頚部腫瘤で化膿性リンパ節炎と、他の代表的な疾患との画像検査での鑑別点をまとめる。

化膿性リンパ節炎

・しばしば膿瘍を形成し、CTで造影効果を有する不整な壁構造と内部の低吸収域を認める。

・化膿性では内部不均一な低エコーを示し、カラードプラー法にて辺縁部の血流増加を認める。

<エコー所見の経過>

病初期:原発感染巣に対応する所属リンパ節が基本構造改変を伴わずに、鎖状、数珠状に腫大する。リンパ門は保たれる。内部は低輝度を示し、血流は亢進する。

進行期:他区域のリンパ節に波及して、時に癒合傾向を示す。

膿瘍形成期:膿瘍を生じると、中心部がさらに低輝度となり、血流は減弱・消失する。辺縁部は協会不明瞭なリング状の被膜様構造として描出される。膿瘍内部はしばしば流動性を有する。

+α:周囲軟部組織の浮腫や腫脹を伴うことも多い。さらに蜂窩織炎や、深頚部膿瘍に発展することがある。

 

非化膿性リンパ節炎

・扁平状、卵円形の低エコー。

 

悪性リンパ腫

・リンパ節病変は球形。短径1cm以上に腫大し、リンパ門の高エコーは消失あるいは不整形。

・超音波でpseudocystic appearanceを呈することもある。

→悪性リンパ腫のように細胞密度が高く内部均一な腫瘍では、内部がほぼ無エコーかつ後方エコー増強を認め、嚢胞性腫瘤と間違える可能性がある。周波数・エコーゲインを調整し、血流も確認することが重要である。

・FDG−PETで強い集積を認める。

・また、以下のような基準に当てはまる場合は、より注意して悪性疾患の可能性を考慮しておかなければならない。

 

悪性腫瘍を考慮して生検を行う参考基準

・全身症状(1週間以上続く発熱、寝汗、10%以上の体重減少)

・鎖骨上リンパ節腫脹

・全身のリンパ節腫脹

・他の症状がなく球形で硬くて可動性のないリンパ節

・直径2cm以上の硬いリンパ節でサイズが増大傾向にある

・直径2cm以上の硬いリンパ節で2週間の抗菌薬に反応しない

・胸部単純X線検査で縦隔腫瘤を認める

・血液検査でリンパ芽球を認める。1系統以上の血球減少を認める

・乳酸脱水素酵素の上昇がある

・抗菌薬治療をしても赤血球沈降速度やC反応性蛋白が上昇する。

鑑別:部位

・頚部リンパ節は、存在する部位によとリンパ流によっていくつかの領域に分類される。

・浅頚リンパ節は、胸鎖乳突筋の前面から側方にあり、頚部、耳介周囲、乳突洞などからのリンパ流を受ける。

・深頚リンパ節は胸鎖乳突筋背面の内頚静脈周囲にあり、扁桃、咽頭、甲状腺など広範囲のリンパ流を受ける。

・オトガイ下リンパ節や顎下リンパ節は、口唇、歯肉や舌を含む口腔内、鼻前庭、眼瞼などからのリンパを受ける。

・鎖骨上窩リンパ節は、肺や縦隔臓器と、胸管を通じて腹部臓器からのリンパ流を受ける。

診断

・頚部以外のリンパ節やリンパ組織(鼠径、腋窩、膝窩、肝臓脾臓)も必ず触診し、本当に頚部リンパ節のみの腫脹なのかを判断しておくこと。

・伝染性単核球症を疑う所見があれば、EBV、CMVの抗体検査。

・GASを疑う所見があれば、迅速検査+咽頭培養

・エコー検査で穿刺可能な膿貯留があれば、穿刺排膿培養を行う。嫌気性菌も追加。

・川崎病と疑う場合には心エコー検査を行う。非感染性のリンパ節腫脹は、本邦では川崎病の割合が非常に多い。

経過

・圧痛、熱感、発赤、境界は不明瞭で、可動性が低い3-6cmのリンパ節腫脹が突然現れる。

・発熱、頻脈、倦怠感などの全身症状を伴う。

・適切な抗菌療法を受けると、通常48-72時間以内にリンパ節の熱感や圧痛は減少し、解熱する。

・仮に解熱しても、リンパ節が縮小傾向にない場合はエコー、CT検査も考慮される。場合によっては外科にコンサルトし、切開排膿も治療選択肢の一つ。

治療

細菌性リンパ節炎(GAS, S. aureusを標的とした場合)

内服:CEX(100mg/kg/day、分3):ケフレックス®
注射:CEZ(100mg/kg/day、分3):セファゾリン®

治療期間:10日間または軽快傾向を示したのち5日間の長い方。

膿瘍形成している場合:切開ないし穿刺排膿+5-7日間。

歯肉・歯肉周囲炎を伴う場合:嫌気性菌も標的として抗菌薬を選択する。

内服:ABPC/CVA(90mg/kg/day、分2)

点滴:ABPC/SBT(150-300mg/kg/day、分4)

治療期間:治療期間は10日間か、軽快傾向を示してから5日間か、長いほうに。
膿瘍がある場合は、切開排膿から5-7日間。

MRSAが原因の場合

内服:ST合剤(TMPとして) 10 mg/kg/day 分2

点滴:VAM 60 mg/kg/day 分4

・治療期間は10-14日間

B. henselaeが原因の場合

(穿刺排膿とともに) AZM 10 mg/kg/day 分1 5日間

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Toxoplasmaの場合

・免疫不全者でない限り、自然軽快する。

・免疫不全者の場合:ピリメサミン、スルファジアジンを使用するが、感染症専門医に必ず相談する。

MTM性リンパ節炎の場合

・自然軽快するが、9-12か月かかる。

・外科的切除が第一選択。顔面神経付近に存在していない限り、外科的切除を行う。切開被嚢のみでは瘻孔化するリスクが高く、再発もしやすいため、推奨しない。

・免疫不全でない限りは培養、感受性結果を待ち、多剤による治療をおこなう。

・MACが最も多いという理由から、「クラリスロマイシン+リファンピシン」で暫定的な治療を開始するという考え方もある。

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