【小児科医blog:血液, 救急】HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:血液, 救急】HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)について

救急

総論

・ヘパリン投与が誘因となり、ヘパリンとPF4(Platelet factor 4:血小板第4因子)の複合体に対する抗PF4/ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)が産生される。

・HIT抗体は血小板、単球などを活性化させてトロンビンの過剰産生を惹起し、血小板減少をきたすとともに血栓塞栓症を引き起こす。血栓症を伴うHITはHIT-T(HITwith thrombosis)と呼ばれる。

・PF4は血小板α顆粒中に存在し、血小板活性化に伴い放出される。ヘパリンに結合する性質があり、血液凝固を促進する。

検査

・2006 年に Warkentin らが提唱した ICEBERG MODEL OF HIT(氷山の一角モデル)では HIT 抗
体(免疫学的測定法)が陽性であっても臨床的に HIT 又は HIT-T を起こすのはごく一部であること
が示されている。

・未分画ヘパリンによる免疫学的測定法陽性率は 29.8%に対して、機能的測定法は 9.9%、HIT 発症は 4.8%、HIT-T 発症は 3.6%であった。HIT 抗体陽性だけで HIT と診断すると過剰診断につながる恐れがある。

症状


・HIT の症状は血小板減少症と動静脈血栓症である。

・血小板減少は HIT 患者の約 95%でみられる。血小板数は発症前の 30-50%まで減少するが、典型例では出血傾向はみられない。

・稀ではあるが、HIT が進行してDIC に発展すると、血小板数が 20 ×103/µL 未満かつ血栓症および出血症状を伴うこともあり、注意が必要である
・HIT の血栓塞栓症はトロンビンの過剰産生が引き金となるため、動脈血栓症よりも静脈血栓症
(深部静脈血栓症やカテーテル関連血栓症など)が多い。

・血栓塞栓症の予防または治療を目的としてヘパリンを投与しているにもかかわらず、血栓塞栓症の増悪や再発をきたしたり、ヘパリンを継続または増量するとさらに悪化したりする場合、HIT の可能性がある。

分類

・HIT 発症例のおよそ 70%は通常発症型 HIT であり、ついで急速発症型 HIT が多い。他のタイプの HIT の発症頻度は低い。

通常発症型 HIT

・典型的な経過をたどる HIT でヘパリン投与 5-14 日後に血小板減少や血栓症を生じる。

急速発症型 HIT

・100 日以内にヘパリン曝露を受けて HIT 抗体が検出されている患者でヘパリン再投与を受けると、数分から 24 時間以内に急激な血小板減少を起こし、大量投与を行ってしまうと、発熱、悪寒、呼吸困難などの強い全身症状を伴い、重症化しやすい。

遅延発症型 HIT

・ヘパリン中止後数日〜数週間ほど経過してから血小板減少や血栓症をきたす状態で、退院後に発症することもある。退院後に HIT を発症した場合、血栓症に対してヘパリンが投与されて致死的転帰をたどることもある。

持続型 HIT

・ヘパリンを中止して適切な治療を 1 週間以上行っても血小板数が回復しないものと定義されている。

自然発生型 HIT 症候群

・直近のヘパリン曝露がなくても手術や外傷、感染を契機に HIT 抗体に類似した抗体が産生され、血小板減少や血栓塞栓症をきたす症候群であり、近年、報告が増えている。

フォンダパリヌクス関連型HIT

・フォンダパリヌクスと交差反応を示す HIT 抗体を有することで発症する HIT であるが、発症率が非常に低く、通常の HIT 抗体はフォンダパリヌクスと交差反応を示さないので、欧米では同剤は HIT 治療薬として使用されている(本邦では未承認)。

ヘパリンフラッシュ型 HIT

・中心静脈カテーテルの管理などで用いられる少量のヘパリンフラッシュの曝露に関連して起こるもので、比較的軽症に留まることが多い。通常、HIT では血小板数は 20 ×103/µL 以上に留まることが多いが、稀に 20 ×103/µL 未満となり、重症血栓塞栓症や出血性梗塞を呈することがあり、HIT 関連DICと呼ばれている

HIT診断・治療フォローチャート

・HIT診断の診断・治療ガイドラインより、診療でのフローチャートを下記に示します。

https://www.jsth.org/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/HIT_GL%E5%9C%A7%E7%B8%AE.pdf

・HITが疑わしい場合はヘパリンを中止し、ヘパリン以外の抗凝固薬を開始します。

・そして、HITスクリーニング検査が陰性であればヘパリン再開。陽性であればHITの診断として血小板数が回復するまで治療を継続、回復後も慢性期治療として経口抗凝固薬を用います。

HITの評価:4Tsスコア


・HIT を疑った場合でも血清学的診断の結果がすぐには得られないことが多いことから、臨床医は
血清学的診断の結果が判明する前に臨床的診断に基づいて初期治療を開始する必要がある。

・臨床的診断法として 4Ts スコアが用いられることが多い。急性の血小板減少 Thrombocytopenia、血小板数減少の時期 Timing of platelet count fall、血栓症や続発症Thrombosis or other sequelae、そのほかの血小板数減少の原因 oTher cause for thrombocytopenia、の 4 項目でスコアをつけ、臨床的に HIT らしいかどうかを判定する手助けとなる。


・4Ts スコアは、それのみで HIT の確定診断ができるわけではなく、臨床的に HIT らしいかどうかを
判定するために用いる。4Ts スコアの判定に迷う場合は、複数人で評価したり、繰り返し評価を行う。

HITの評価2:免疫学的測定法


・4Ts スコアで HIT を疑った際には、速やかに免疫学的測定法を実施する。
・免疫学的測定法は LAI、CLIA のどちらを選択しても良い。
・免疫学的測定が陰性であれば HIT を否定する。陽性の場合、機能的測定法が実施可能であれ
ば行うべきだが、実施不可能であれば、4Ts スコアと免疫学的測定法の結果から判定せざるを得な
い。
・機能的測定法ができない状況下では、血小板活性化抗体の存在を正確に判定することは難しい。
このため、HIT 治療が許容されるのであれば HIT と診断して初期治療を開始し、4Ts スコアや免疫
学的測定法を繰り返し評価しながら、HIT 診断が正しいかどうか判断する。

ヘパリン中止後の治療:抗凝固薬


・本邦では、ヘパリン以外の抗凝固薬としてアルガトロバン(ノバスタン)が承認されている。

・HIT 患者の血栓症発症抑制を目的として、0.7 µg/kg/min(肝障害や出血リスクがあれば 0.2 µg/kg/min)より点滴静注を開始し、APTT を指標に投与量を増減する。

・免疫学的検査で陰性が確認された場合は、抗凝固薬を中止しへパリンを再開する。

・海外ではヘパリン以外の抗凝固薬としてダナパロイドやフォンダパリヌクスも推奨さているが、本邦では HIT への保険適用はない。

投与例

ノバスタン(10mg/2mL)

・生理食塩水を足して、計50mLくらいに調節。アルガトロバン 10mg/50mL(=0.1mg/mL)の組成になるように調節する。

点滴から経口抗凝固薬への切り替えについて

・アルガトロバンによって血小板数が回復した後は、経口抗凝固薬にスイッチしていく。


<DOAC への切り替え方>
・アルガトロバン投与終了後速やかに DOAC の経口投与を開始する。
・血小板数回復後に DOAC へ切り替えることを推奨するが、臨床的に安定していれば血小板の回
復を待たずに DOAC に切り替えても良いとする報告も散見される。
・投与方法は VTE の治療に準じるが、リバーロキサバンの場合は 15 mg を 1 日 2 回 3 週間投与後
に 15 mg を 1 日 1 回投与することを推奨する

<ワルファリンへの切り替え方>
・基礎疾患等で DOAC を投与できない場合は、血小板数が回復したタイミングでワルファリンの投与
を開始する。

・PT-INR が安定するまで、アルガトロバンと併用し、短くても 5 日間以上は併用する。

・なお、アルガトロバンは PT-INR を延長させるため、アルガトロバンとワルファリンを併用後の PT-INRが 2.5 以上となればアルガトロバンを中止する。4-6 時間ごとに PT-INR を測定し、PT-INR が 2.0 未満となればアルガトロバンを再開する。PT-INR が 2.0 以上となるまで上記を繰り返す。

治療期間

・経口抗凝固薬の使用は、臨床経過をみながら 3 か月程度を目安とする。

・ただし、血小板数回復後は血栓症のリスクが低いため、下肢静脈エコー等で血栓症を認めない場合は、3 か月より前に経口抗凝固薬の中止を検討しても良い。

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