以前ブログ記事に、先天性甲状腺機能低下症の診断までのまとめはUpしています。
今回は、治療についてフォーカスしてまとめたいと思います。
↓診断までの流れについては下記参照↓
治療の適応は、
①先天性甲状腺機能低下症(CH: congenital hypothyroidism)に対する治療と、
②TSH不応症というTSH受容体遺伝子(TSHR)の変異などTSHシグナリング受容機構の異常への治療
………..の2つがあります。
CHの治療
・先天性甲状腺機能低下症マススクリーニングガイドライン(2021年改訂版)では、下記条件のいずれかを満たす場合は、速やかにレボチロキシンナトリウム(LT4, チラージン®️散・錠)の補充開始を推奨しています。
CH治療開始条件
①症状チェックリスト2項目以上 (不活発、便秘、巨舌、黄疸遷延、嗄声、臍ヘルニア、四肢冷感、皮膚乾燥、小泉門が大きいなどが先天性甲状腺機能低下症の症状)
②超音波検査で甲状腺が同定できない、または甲状腺腫がみられる
③TSH 30 μU/mL以上、またはTSH 15-30 μU/mLかつfree T4低値
※濾紙血TSH値の場合、約1.6倍が血性TSH値に相当します。
・すぐに治療開始しない症例についても、遅発性TSH上昇や高TSH血症の遷延を想定して、1-2週間後に甲状腺機能を再評価します。
・生後3-4週間を過ぎてもTSH 10 μU/mLを超えている場合は、治療開始も考慮されます。
L-T4(レボチロキシンナトリウム)処方例
商品名:チラージン®️
剤形:散(100μg/g)、錠(12.5, 25. 50, 75, 100μg/錠)
投与方法:分1(朝食前など)、経口投与
処方量
生後6-12ヶ月:6-8μg/kg/日
1-5歳:5-7μg/kg/日
6-12歳:3-5μg/kg/日
13-18歳:2-4μg/kg/日
成人:1-2μg/kg/日
治療の指標
TSH正常範囲(5mIU/L未満)
free T4 1.5-2.0 ng/dL(基準範囲の上半分)
・甲状腺エコー検査以外の核医学検査などによる病型診断は5-6歳で実施する。
治療中の注意点
・治療中も定期的に甲状腺機能検査を行い、TSHを正常範囲内、FT4を年齢別正常値の50%以上から正常上限に保つ必要性がある。
・特別な食事療法は不要だが、過剰量のヨウ素の摂取は内因性の甲状腺ホルモン合成の抑制や自己免疫性甲状腺疾患発症のリスク上昇など原病への影響がある。よって、海藻類や昆布だしなどの過剰摂取には注意が必要である。
・チラージン®️Sに含まれるT4は天然型であり、投与量が問題ない限り副作用はない。しかしごく稀に添加物によるアレルギーとして皮疹、トランスアミナーゼ上昇などが起こるとされる。散剤に比べて錠剤が添加物が多いため、錠剤であれば散剤への変更が考慮される。
外科的治療
・CHの大半は外科的治療は不要。
・しかし、例外的に甲状腺ホルモン合成障害においてLT4による補充療法にもかかわらず巨大甲状腺腫を生じ、気管圧迫のリスクや美容的理由から甲状腺切除を要する場合がある。
・また甲状腺ホルモン合成障害における甲状腺分化癌合併の報告例も切除が考慮される。
TSH不応症の治療
・上記に特異的な治療管理方針はなく、他の原発性CHと同様の治療でよい。
・しかし、TSHRのヘテロ型ではごく軽度のTSH高値(5-10μU/mL)のみを呈すケースもあり、治療適応については症例によります。米国では成人の潜在性甲状腺機能低下に対しては、一定頻度で顕性機能低下への進展のリスクがあるので積極的に治療すべきという意見もあります(あくまで一意見であり、全体的な方針は??)。
予後
・CHの一部は乳児一過性であり、病型が確定しない症例においては、3歳以降に試験的に服薬を漸減中止し、治療の必要性の判断と病型診断を含めた再評価の実施が推奨されています。
・通常5-6歳を目安に休薬の上甲状腺超音波検査、TRH負荷試験、核医学検査(123 I シンチグラフィー・摂取率測定、パークロレイト放出率測定)などを行います。
・服薬を中止できた例でも、思春期などに甲状腺機能低下が再度出現することもあり、定期的な血液検査での経過観察は必要となります。
・また妊娠中は甲状腺ホルモン需要量が約50%増加するため、妊娠判明後は速やかに甲状腺機能モニタリングの間隔を短くし、投与量をこまめに調整します。



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