【小児科医blog:神経】急性散在性脳脊髄炎(ADEM)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:神経】急性散在性脳脊髄炎(ADEM)について

神経

総論

・急性散在性脳脊髄炎(ADEM: acute disseminated encephalomyelitis)は、感染に伴う自己免疫機序が原因とされているが、詳細は不明である。

・5-10歳前後の小児に好発する(平均発病年齢5.5歳)。

・英国での研究によると、男女比は男:女=2.0:1

定義

・急性〜亜急性に中枢神経症状が発症するが、中枢神経径の多巣性の症状で、炎症性脱髄を病因とする疾患である

・行動変化や意識の変容を主体とする脳症症状を伴う必要がある。

・脳症症状がない場合はclinically isolated syndrome (CIS)などを考える。

再発例の鑑別

・発症後3ヶ月以上して新規の神経症状やMRI病変が出現することはない。出現した場合は多発性硬化症や視神経脊髄炎を考える。

・再発する場合は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG: myelin oligodendrocyte glycoprotein)抗体関連疾患(MOGAD: MOG-IgG associated disorders)や多発性硬化症(MS: multiple sclerosis)を疑う。

病因・病態

・小児のADEMは発病前に感染症やワクチン接種がみられることが多く、免疫介在性の炎症性脱髄が病態と考えられているが未解明な点が多い。

・分子相同説では、髄鞘を形成するミエリンの構成蛋白であるミエリン塩基性蛋白(MBP: myelin basic protein)やミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG: myelin oligodendrocyte glycoprotein)が感染病原体と相同する構造を有するため、ミエリンに対する免疫的な攻撃が起こるためと考えられている。

・HHV-6、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、EBAYウイルスに反応するT細胞はMBPと高3反応を起こすことが知られている。

・炎症性カスケード説では、先行感染症によるサイトカインやケモカインで影響を受けた脳からミエリン関連蛋白が流失し、T細胞を活性化すると考えられている。

臨床像

・ウイルス感染やワクチン接種から1-2週間後に、急性の神経症状をきたす。

先行症状期

・感染症やワクチン接種後6-12日して、発熱、不快感、眠気、悪心、頭痛などが起こって先行症状期に入る。

・発熱や頭痛、意識障害、異常行動、けいれん、手足のしびれや麻痺など多彩な全身性の神経症状が急速に進行する。

発病期

・先行症状が始まり4.5-7.5日すると、神経症状が急性-亜急性に出現してきてADEMを疑うことができる状況になる。

・診断基準から必ず認められる脳症症状(行動変化や意識の変容を主体とする症状)以外には、歩行障害、発作、運動麻痺、排尿障害、感覚障害、視覚障害、脳幹障害などが高頻度に見られる。

・症状や徴候の多巣性、すなわち脳や脊髄の多数の部位の障害を示唆する所見がADEMの特徴

・多くは後遺症なく改善するが、神経障害が残存する例もある。

小児ADEMの診断基準

以下の5項目すべてを満たす

①初発の多巣性の中枢神経症状・徴候で、炎症性脱髄が推定される

②発熱のみでは説明できない脳症症状(行動変化、意識障害など)

③発病後3ヶ月経過したのちには新たな臨床症状やMRI病変が出現しない

④脳MRIは急性期(3ヶ月)の間、異常所見を示す

⑤典型的なMRI異常は、以下の特徴を示す

 ・大脳白質主体のびまん性、境界不鮮明の1-2cm以上の大きな病変

 ・白質のT1強調像での低信号病変はまれ

 ・視床、大脳基底核などの深部灰白質病変があることがある

画像所見

・MRIのT2強調像/FLAIR像において左右非対称の高信号域が、皮質下白質、基底核、視床、脳幹、小脳、脊髄に分布する。

・多くは斑状で、mass effectは乏しい。

・急性期に周囲浮腫や拡散制限、造影検査での辺縁増強・リング増強を認めることがある。大脳白質主体のびまん性、境界不鮮明 の1-2cm以上の大きな病変が特徴で、造影効果は1/3以下の症例でみられるに過ぎない。

・脊髄に所見を認める例は約3分の1ほどで、複数椎体にわたって長大なことが多い。また多発性硬化症と異なり、白質のT1強調像での低信号病変はまれで、視床・大脳基底核などの深部灰白質病変があることがある。

・出血を伴う急性出血性白質脳炎(AHLE: acute hemorrhagic leukoencephalitis)はADEMの重症型であり死亡率も高い。回復しても後遺症を残す頻度が高い。

鑑別疾患

・MS病変は脳室周囲に多く、一般に脳幹にないなど分布がことなることが多い。

・MOGADは初回、あるいは再発時に視神経炎症状や脊髄症状をきたす例が多いとされる。

髄液検査

・髄液MBPの増加を確認

・可能であればIgG indexなども検討。

治療

・病歴、症状、MRI検査、髄液検査などからADEMと診断した場合治療を開始。

・てんかん重積になっている症例ではまずは抗けいれん薬でのけいれんの止痙を優先。

・髄液検査や咽頭のウイルス抗原検査の検索を行い、病原体が直接中枢神経系に侵達している一次性脳炎が否定できれば、免疫就職治療を開始する。

免疫修飾治療:ステロイドパルス療法

・メチルプレドニゾロンパルス療法(MP) 3日間

 ソル・メドロール静注用500mg:30mg/kg/日(最大1.000mg/日)

 使用法:生食100mLに溶解して2時間で点滴、3日間継続。

 注意点:ステロイドにより凝固が亢進するので、血栓形成予防としてMP終了翌日までヘパリン化

  →へパリン 100-150IU/kg/日を持続点滴静注に混注する。

・1-2週間かけて効果判定。効果不良例ではMPを再度行う。

・あるいは免疫グロブリン治療、血漿交換などの血液浄化療法を検討する。

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