総論
・無気肺(atelectasis)は、肺胞内の気体が減少または消失し、結果的に当該領域の肺容積が縮小した状態である。
・様々な呼吸器疾患で認められるX線所見上の診断名であり、無気肺を生ずる原因を究明することが真の診断になります。
分類
・以下の4つに大別されます。
吸収(閉塞)性無気肺
・気道が閉塞し肺への気流が阻害されると、肺胞内の二酸化炭素は水への溶解度が高いため、容易に毛細血管床に溶解する。酸素も同様に、徐々に溶解する。
・結果、残った気体では肺胞腔を保つ圧力を維持できず、肺胞内の容積は減少していく。
圧迫性無気肺
・腫瘤、限局性の過膨張、胸腔内の液体や気体貯留などの空間占拠性病変があると、それに隣接する肺は圧迫により拡張が妨げられ容積が減少する。
・胸郭変形や横隔膜挙上などによって胸腔内の容積が減少する場合にも生じる。
瘢痕性無気肺
・肺間質の線維化と肥厚により、肺コンプライアンスが低下するため肺胞容積が減少する。
・間質性肺炎などで見られる。
・局所的には慢性感染症(慢性肉芽腫症や結核など)でみられ、同側の正常肺が代償性に過膨張を呈する。
癒着性無気肺
・Ⅱ型肺胞上皮細胞から分泌されるサーファクタントの活性低下または絶対的・相対的欠乏により、肺胞の表面張力が強まり肺胞容積が減少する。
病態
・無気肺によって生じる病態には以下のようなものがある。
換気障害
・正常肺では肺の換気と血流はほぼ均等に分布するが、無気肺を生じると肺胞換気がなくなり、肺血流のみが存在することになる。
・その結果、肺内シャントが生じ低酸素血症を呈する(しかし、生体の自己調整ですぐに無気肺の部位への肺血流も減少するため、低酸素血症は軽度の場合が多い)
気道分泌物の貯留
・換気がなくなることて気道分泌物が貯留しやすくなる。
・そのため細菌感染症を起こしやすくなる。
・主に吸収性無気肺の増悪因子。
肺コンプライアンスの低下
・肺虚脱の程度に関係し、変化は可逆性と言われている。
・肺の虚脱が高度なほど再拡張に必要な圧力は増加し、結果として努力呼吸を生じる。
・しかし、瘢痕性無気肺の場合は不可逆的変化のことが多く、コンプライアンスは著しく低下したままである。
肺血管抵抗の増加
・無気肺が生じると、代償性に周囲の肺が過膨張になり、肺血管が伸展するため肺血管抵抗が増加する。
・また、低酸素血症による肺血管収縮も抵抗を増加させる。
肺損傷の悪化
・人工呼吸管理において、反復する無気肺は好中球の活性化や肺炎症メディエーターを増加させる働きがあり、肺損傷を悪化させる要因になる。
症状
・病変が小さい場合、無症状のことも多いが、症状がなくても感染巣になりうるため、反復する肺炎や気管支炎の原因となる。
・広範囲の病変では、換気障害によって低酸素血症を生じ、病変部に一致して呼吸音が減弱する。
・肺コンプライアンスの低下によって努力呼吸や多呼吸がみられる。
検査
胸部Xp
・正面像では心臓や縦隔と重なって境界が不明瞭となることがあり、側面像と合わせて明瞭に認識できることもある。
直接所見
・葉間裂の偏位
・局所の濃度上昇
・気管支・血管像の集束
間接所見
・片側横隔膜の挙上
・縦隔偏位
・残存肺の代償的過膨張
・肺門部の移動
・肋間の狭小化
・air bronchogramが認められない(吸収性無気肺の場合のみ)
胸部CT
・どの分類の無気肺かの鑑別に役立つ。しかし小児では被爆リスクあり、検査目的を明確にした上で検査すべき。
超音波検査
・無気肺では肺胞内の含気がなくなり肺容積が減少するのに対し、consolidationでは液体や占拠性病変で置換されるために容積は変化しない。
治療
・急性性無気肺の場合の治療を以下にまとめる。
薬物療法
・喀痰の粘稠度を低下させたり、分泌能を促進させたりする目的で去痰薬が有効
・気道感染症の関与を疑う場合は、抗菌薬を投与
肺理学療法
体位ドレナージ
・無気肺の部位が上方(高位)になるような姿勢をとらせ、重力を利用して末梢気道からの分泌物の排出を促進させる。
気道クリアランス法
・体位ドレナージに加えて、胸壁を徒手的に軽打あるいは振動させて、分泌物の中枢気道への移動を促す方法。
・咳嗽反射が弱い場合や人工呼吸管理中であれば、呼気に合わせて介助者が胸郭を圧迫して、呼気の流速を高めて痰を移動させるスクイージング法も有用。
気道内陽圧呼吸療法
・健常肺がより過膨張になり換気血流比の不均等分布が助長される場合もあり注意。
気管支鏡的治療
・異物や粘液栓の除去だけでなく、選択的な気管支肺胞洗浄が閉塞気道の再開通や感染症の原因検索に有用なことがある。
・また、気管支鏡では気道狭窄や粘膜面の変化を直接見ることができる。
外科的治療
・内科的治療を行っても無気肺の改善がなく、感染や喀血のコントロール不良の場合は肺葉または肺区域切除術を考慮する。
・肺全体に病変があり、無気肺はその一部である場合には、症状が強くても切除術の適応には慎重にならざるを得ない。
参考書籍
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