こんにちは!小児科医りんご🍎です。
病院の診察室で「血液検査をしておきましょう」と言われたとき。親御さんの心には、ギュッと不安がよぎると思います。小さな体に針を刺されるのを見るのは、本当に辛いですよね。
私も自分の娘が幼い頃、貧血の採血で処置室で泣く声を聞いて、胸が締め付けられる思いをしたことがあります。
そんな採血の場面で、ふとこんな疑問を持ったことはありませんか?
「私たち大人は腕(肘の内側)から採るのに、なんでこの子は『手の甲』や『足』から採血するの? なんだか痛そう……」
そこには「お子さんの負担を最小限に抑え、確実に一発で採る」ための理由が存在します。
今回は、幼児の採血部位の秘密について、小児科医の視点から分かりやすく解説します!
なぜ「腕(肘の内側)」から採らないの?
大人の方の採血では、肘の内側(肘窩)を通る「尺側皮静脈」などの太い血管を狙うのが基本です。
しかし、乳幼児の場合、この部位から採血を行うことは非常に困難です。
その最大の理由は、乳幼児期特有の厚い皮下脂肪にあります。
肘の内側を通る太い血管であっても、この厚い脂肪の層の奥深くに隠れてしまっているため、目で見て走行を確認する(視診)ことも、指で触れて弾力を確かめる(触診)ことも極めて難しくなります。
見えない、そして触れない血管に対して「この辺りだろう」と予測で針を進めることは、医療において最も避けるべきリスクです。
もし外してしまえば何度も針を刺し直すことになり、結果的にお子さんへ余計な痛みと恐怖を与えてしまいます。
だから「手の甲」や「足」を選ぶんです!
そこで私たちが第一選択として狙うのが、「手の甲(手背静脈網)」や「足の甲(足背静脈網)」です。
これらの部位は、肘周りに比べて皮下脂肪が薄く、皮膚のすぐ下に血管が透けて見えやすいという解剖学的なメリットがあります。
「こんな細いところから?」と心配になるお気持ちはよく分かります。
しかし、皮下脂肪に隠れた見えない太い血管を闇雲に探すよりも、目視できる血管を確実に狙う方が、一回の穿刺(針を刺すこと)で成功する確率が格段に上がるのです。
また、採血だけでなく点滴が必要なケースでは、関節の曲げ伸ばしに影響されにくく、点滴が漏れにくいという点もメリットとなります。
確実に一発で採るための「小児科医の戦略」
私たち小児科医や看護師は、「一発で決める!」という強い覚悟で処置に臨んでいます。
見えないところで行われている、プロの戦略を紹介します。
安全を最優先した「固定」
お子さんは恐怖からどうしても動いてしまいます。針が刺さっている最中に動くと、血管を突き破ってしまい非常に危険です。そのため、バスタオルでおくるみのように体を巻いたり、複数のスタッフで関節をしっかり保持したりして安全を確保します。見ていると可哀想に感じるかもしれませんが、最短で安全に終わらせるための必須プロセスです。
血管を「温める」
特に寒い時期など、体が冷えていると血管は収縮して細く見えにくくなります。採血前にホットパックや温かいタオルで手の甲や足を温めることで、血管を拡張させ、ターゲットをより明確にする工夫をしています。
お父さん・お母さんへのお願い
処置室から聞こえるお子さんの泣き声は、本当に耳を塞ぎたくなりますよね。代わってあげられるものなら代わってあげたいと思うのが親心です。
採血が終わって戻ってきたら、「よく頑張ったね!」「痛かったのに偉かったね!」と、思いっきり抱きしめて、たくさんたくさん褒めてあげてください。
お父さん、お母さんの温かい言葉とハグが、お子さんにとって何よりの特効薬になります。
私たち小児科医も、お子さんの涙が少しでも早く笑顔に変わり、ご家族の不安が和らぐよう、これからも知識と技術を磨き続けていきます!


コメント