新生児晩期循環不全の診断基準(新生児内分泌研究会)
Ⅰ出生後数日異常を経過し、
Ⅱ呼吸循環動態が落ち着いた時期が存在した後
Ⅲ明らかな原因なく、
Ⅳ突然、血圧低下もしくは尿量減少のエピソードのいずれか1つを認め、
Ⅴ昇圧治療を要した例
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エピソードとは
1 血圧低下:繰り返し測定した血圧がそれまでの80%未満に低下
2 尿量減少(以下の3項目のいずれか)
a)8時間の尿量が半量未満
b)8時間の尿量が「1ml/kg/h未満」
c) 4時間排尿が確認できない(ただし尿閉は除外する)
明らかな原因とは
失血、敗血症、症候性未熟児動脈管開存症、脳室内出血、壊死性腸炎など循環動態に影響を及ぼすと考えられる病態をさす
参考所見
1)胸部X線所見:肺水腫様変化
2)Na 130 mEq/L未満または前値の5 mEq/L以上の急激な低下
3)K 5.5 mEq/L以上
4)15 g/kg/日または1.5 %/日を超える体重増加
病態
・主に視床下部-下垂体-副腎皮質系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis:HPA軸)の未熟性による相対的副腎不全が原因として考えられている。
・HPA軸はコルチゾール分泌を制御しており、ストレス時に必要な量のコルチゾールを副腎皮質から分泌する。しかしHPA軸が抑制された状態ではストレス量に見合ったコルチゾールが分泌されず、これを相対的副腎不全と呼ぶ。
・リスク因子としては、在胎期間が短く重症度の高い早産児に発症しやすい。
・好発時期は生後2-4週間ごろ。およそ修正32週移行には見られにくい。
症状
・「体重増加」、「全身浮腫」、「低ナトリウム血症」などを同時に認めることが多い。
・経腸栄養の消化が良好にもかかわらず、自発運動の低下、体色不良など認める。
・脈圧開大を伴う低血圧と尿量減少が特徴的
・カテコラミンや容量負荷による昇圧治療に反応性が乏しく、通常低用量のヒドロコルチゾン投与で速やかに血圧は上昇する。
検査
・低血圧を生じる明らかな他疾患、敗血症、PDA、脳室内出血、失血、壊死性腸炎などを除外することから。
心臓エコー
・病初期には高心拍状態を呈するため、左室拡張末期径が小さくなり、左室壁応力が減少し、左室駆出率が増大する。
臓器血流エコー
・腎動脈の収縮期最大血流速度が上昇し、拡張期血流の途絶または逆流を認める。
・重症例では前大脳動脈でも同様の所見を認める。
胸部X線
・発症時に心胸郭比の低下を認めることがある。その後肺水腫変化が見られる。
・最終的には、カテコラミンなどの昇圧治療に反応が乏しく、低用量ヒドロコルチゾンが著効することで診断的治療。
治療
ヒドロコルチゾン
・通常、1-2 mg/kg程度で効果が得られる。
・投与後2-6時間で効果が得られない場合には、同量~5 mg/kgまで増量して追加投与
ステロイドでも昇圧効果が得られなければ、バソプレシン投与を考慮。
予防
・晩期循環不全は低ナトリウム血症、甲状腺ホルモン補充療法、利尿薬、超早期授乳、早期抜管などとの関連性が示唆されている。
・未熟児に対するストレスや代謝更新、循環動態の変化などが誘引になると考えられており、Naの補充や、好発時期の侵襲的処置や薬剤投与開始時にはバイタルサインの記録を3時間おきに行うなど、発症前の全身管理を行う


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