胎児性アルコール症候群とは
・胎児性アルコール症候群(FAS)は、妊娠中に母親がアルコールを摂取することによって胎児に影響を与える症候群です。
・アルコールは胎盤を通過して胎児に影響を与えます。FASは、胎児の成長障害、知能障害、顔面異常などの症状を引き起こします。
・唯一の対策は予防です。少量の飲酒でも、妊娠のどの時期でも影響を及ぼす可能性があることから、妊娠中の女性は完全にお酒をやめるようにしましょう。
胎児性アルコール症候群の疫学
・胎児性アルコール症候群の疫学は、国や地域によって異なりますが、世界的に見ると、1,000人に1人から3人の割合で発生しています。
Popova S, Lange S, Probst C, et al : Estimation of national, regional,and global prevalence of alcohol use during pregnancy and fetal alcohol syndrome: a systematic review and meta-analysis. Lancet Glob Health 5 :e290–e299. 2017.
Roozen S, Peters GJ, Kok G, et al. Worldwide prevalence of fetal alcohol spectrum disorders: a systematic literature review including meta-analysis. Alcohol Clin Exp Res 40:18–32. 2016.
・FASは、特にアルコール依存症のある女性や、アルコールを過剰に摂取する女性によって引き起こされることが多く、妊娠初期にアルコールを摂取すると、胎児への影響が大きくなるとされています。
・また、飲酒量に比してリスクも増えるとされています。一方、ここまでなら大丈夫という飲酒量の閾値はわかっていません。
胎児性アルコール症候群の特徴
・1996年に出された診断基準では、①顔面の特異的顔貌、②発達遅延(成長障害)、③中枢神経系の障害となっています。
顔面異常
・FASの胎児は、目の間隔が狭く、上唇が薄く(薄い上口唇)、鼻が低く、平坦な人中、平坦な顔面中央、耳や口が小さくなることがあります。
・これらの特徴は、FASの診断に役立ちます。
成長障害(発達遅延)
・FASの胎児は、出生時の体重が軽く、身長が短くなることがあります。
・また、成長が遅れたり、身体の一部が小さくなることがあります。
知能障害(発達遅延)
・FASの胎児は、知能障害が生じることがあります。知的能力に欠陥がある場合もあります。
・非遺伝性疾患による知的障害ではアルコールが最多の原因とする意見もあり、大きな問題になっています。(Zweben JE : Special Issues in treatment –women. Princeples of addiction medicine: p465-477, 2009.)
・ADHDやうつ病、依存症などの精神科的問題が、後程あきらかになることもあります。
中枢神経系の障害
・出生時の頭蓋の大きさの減少
・小頭症、脳梁欠損などの脳の形態異常
・感音性難聴
・協調運動障害
胎児性アルコール症候群の治療
・胎児性アルコール症候群は、現在のところ完治する治療法はありません。しかし、早期発見と適切な治療によって、症状を改善することができます。治療には、特別な教育プログラム、理学療法、言語療法、および行動療法が含まれます。また、合併症の治療も必要になる場合があります。
・FASの最良の予防策は、妊娠中はアルコールを摂取しないことです。アルコールを摂取すると、胎児に多大な影響を与えることがあるため、妊娠中はアルコールを控えることが重要です。
 
  
  
  
  

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