【小児科医blog:皮膚, 感染症】伝染性膿痂疹について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:皮膚, 感染症】伝染性膿痂疹について

皮膚

Intoroduction

・伝染性膿痂疹の原因菌は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌など(黄色ブドウ球菌が9割ほど)

・俗に「とびひ」と言われる。あっという間に火事の火の粉がとび火するように体のあちこちに広がっていくためである。

・小児に多い。顔や四肢などの虫刺されを引っ掻いたり、転んですりむいた後などに細菌感染を合併することでなりやすい。鼻腔周辺も多い。

・予防として、爪は短く切り、手洗い、入浴などで皮膚をきれいにしておく。

・臨床症状として分けると、みずぶくれができる「水疱性膿痂疹」と、炎症が強く厚い痂皮が付着した「痂皮性(非水疱性)膿痂疹」に分類される。非水疱性が70%

水疱性膿痂疹

原因

・黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の感染が原因として多い。

・水疱が飛び火するように拡がることから「とびひ」とも呼ばれる。

・夏季に多い。暖かく、湿度の高い環境で起こりやすく、人が密集していると容易に感染が拡大する。

・黄色ブドウ球菌が原因の場合、菌の産生する表皮離脱毒素(ET: exfoliative toxin)が表皮顆粒層細胞のデスモグレイン1を選択的に傷害して、角層下ないし顆粒層に水疱を形成する。

臨床症状

・夏季(特に初夏から真夏)に乳幼児・小児に好発する。

・虫刺されや汗疹(あせも)の部位を掻爬したり、アトピー性皮膚炎の患者が病変部を掻爬してびらん・湿潤局面を形成、二次的に細菌感染を合併して、膿痂疹に移行する場合が多い。

・掻爬したびらん、湿潤局面の周囲に小水疱が形成され、さらにその周囲の潮紅がみられる。水疱は簡単に破れ、びらんになる。かゆみをともない、水疱を掻き破った指で他の場所を掻くことで、水疱内容液またはびらん面の浸出液によって周囲にうつり、全身に拡大する。

・水疱や容易に破れ、びらんになる。水疱、びらんが乾燥すると、痂皮を形成し、辺縁部には薄い膜様の落屑を伴う。

検査

・原則的には臨床症状に基づく診断がなされるが、最近学的検査としての培養も有効。

・初診時に病変部の細菌培養をしておく。膿や浸出液を検体として、Gram染色・培養検査を行う。

・最近はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticilin-resistant S. aureus: MRSA)が原因菌として判明することも少なくない(黄色ブドウ球菌感染の25%がMRSAとのデータもある)。

鑑別疾患

①虫刺され:衣服から露出されている部位に紅斑、丘疹。合併症として多い。

②接触性皮膚炎:小児では多くないが、外用薬、湿布薬、おもちゃなどで多い。

③小児の湿疹、アトピー性皮膚炎:根底に湿疹や皮膚炎があると合併が多い。

④汗疹:いわゆるあせも

治療

・軽症の場合は、抗菌薬軟膏を外用、局所はガーゼなどで覆う。範囲が狭い場合は、泡立てた石鹸でそっと洗って外用薬を塗るだけで軽快する。

・かつて頻用されたゲンタマイシン軟膏は現在S. aureusに耐性株が多くなったため、ニューキノロン系、フシジン酸などを用いる。フシジン酸は黄色ブドウ球菌やGASに対して感受性を有する抗菌薬であり、欧州では第一選択役の一つ。わが国ではナジフロキサシン(アクアチム®︎)も適応。

 例)フシジン酸外用(フシジンレオ®︎), 1日2-3回, 5日間

   ナジフロキサシン(アクアチム®︎), 1日1-3回, 5日間

・病変が広範囲であったり、拡大傾向がみられる場合、さらに難治の場合は抗菌薬を内服させる。通常は、GASとStaphylococcus aureusの鑑別は見た目では困難であり、第一世代として経口セフェム系が有効。外用薬, 清潔・洗浄と併用する。

 例)セファレキシン(ケフレックス) 50 mg/kg/日, 分3-4, 5-7日間

・セフェム系投与できない場合

 エリスロシン、クリンダマイシンを代替薬として考慮する。しかしGASのエリスロシン耐性率は高く、効果がない可能性を念頭において治療経過を追う必要性がある。

 例) エリスロマイシン (エリスロシン) 40 mg/kg/日、分3-4、7日間

   クリンダマイシン (ダラシン) 15-30 mg/kg/日、分3、7日間

 ※クリンダマイシンは散剤、シロップ剤の販売がなく、幼児に対しては脱カプセルして投与することになるが、非常に苦い。

・改善がない、またはMRSAであるときはST合剤

 例)ST合剤(バクタ®︎) トリメトプリムとして 10 mg/kg/日, 分2, 5-7日

  顆粒:1g中 SMX(スルファメトキサゾール) 400mg+TMP(トリメトプリム)80mg

 ※ST合剤はレンサ球菌の耐性率が高いため、ファーストラインとしては用いずに、培養検査で感受性を有する黄色ブドウ球菌が検出された場合に使用する。

痂皮性膿痂疹

原因

・A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因菌として証明されるが、S. pyogenes, S. aureusが培養で得られることも少なくない。

臨床症状

・季節はあまり関係なく、比較的急速に発症する。

・小児より成人、とくにアトピー性皮膚炎に合併しやすい。

・紅斑、米粒大ほどの膿疱、びらん、さらに厚い痂皮を伴う。発赤・腫脹が顕著で疼痛を伴う。発熱、リンパ節腫脹、特に咽頭痛などの全身症状を呈することがある。

・重症例では菌産生毒素によって猩紅熱のように全身が赤くなったりする。

・顔面、手掌、指などに紅斑・丘疹が出現し、小膿疱、つぶれてびらんになり、さらに厚い痂皮を形成する

検査

・白血球数の増加、核の左方移動、CRP上昇、さらにASO上昇をきたすこともある。

・溶連菌による膿痂疹では、菌の産生する毒素により、まれに腎障害を併発する可能性がある。そのため尿蛋白の出現には注意が必要。

鑑別疾患

①Kaposi水痘様発疹症

単純ヘルペスウイルスの接触感染で生じる。とくにアトピー皮膚炎が根底にある

②ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)

高熱、リンパ節腫脹、全身の発赤にびらんを形成する。

口周囲にしわが生じ特有の顔貌を呈する。

治療

・S. pyogenesによる痂皮性膿痂疹は、第一選択にペニシリン系またはセフェム系抗菌薬を内服、さらに症状が高度なら点滴静注で全身投与する。

・アレルギーなどでペニシリンが使用できない場合には、エリスロマイシン、クリンダマイシンなどを用いる。

・腎障害予防のためにも、全身投与は10日間〜2週間ほど行う。

重症例:SSSS

・まれに、黄色ブドウ球菌の産生する菌体外毒素によって全身的症状を示す場合がある。菌体外毒素が血流を介して全身の表皮顆粒層に細胞間棘融解を生じさせるため、あたかも全身性熱傷のような状態となる。

・詳細は過去ブログ記事を参照↓

学校生活で気を付ける点

・水脹れやびらんからの滲出液を触ったり引っ掻いたりすると、なかの細菌で次々にうつる。病変部を概要処置してきちんと覆っておけば問題なし。プールなどの水でうつることもないが、触れることで周囲に移す可能性があるので気を付けること。

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