こんにちは!小児科専門医で、2人の娘の育児に奮闘中のパパでもある小児科医りんごです。
いつも「ゆるっと小児科医ブログ」を読んでいただきありがとうございます🍎
赤ちゃんが生まれると、毎日の「うんちチェック」が日課になりますよね。
「あれ、今日のうんち、なんだかいつもより色が薄いかも…?」
とハッとした経験があるパパ・ママも多いのではないでしょうか。
実は、赤ちゃんのうんちの色は、肝臓や胆道のSOSを知らせてくれる非常に重要なサインです。
今回は、母子健康手帳に必ずついている「便色カード」と深く関わる重要な疾患、「胆道閉鎖症(たんどうへいさしょう)」について解説します。
少し怖い名前の病気ですが、「生後なるべく早く見つけて治療すること」で赤ちゃんの未来を大きく変えられる病気です。
専門的な内容も、パパ・ママに分かりやすく噛み砕いてお話ししますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
1. 胆道閉鎖症ってどんな病気?
私たちの体には、肝臓で作られた「胆汁(たんじゅう)」という消化液を、腸へ運ぶための「胆道(胆管)」というパイプがあります。健康な赤ちゃんのうんちが黄色や緑色をしているのは、この胆汁の色が混ざっているからです。
胆道閉鎖症は、生まれつき、あるいは生後間もなく、このパイプ(胆道)が詰まってしまう病気です。
■パイプが詰まるとどうなるか?
本来なら腸へ流れるはずの胆汁が、肝臓の中にパンパンに溜まってしまいます。すると、肝臓の細胞がダメージを受け、放置すると肝臓がカチカチに硬くなる「肝硬変(かんこうへん)」へと進行してしまいます。
■疫学
日本では約1万人に1人の割合で発生し、男の子よりも女の子にやや多い(約1:2)傾向があります。なぜパイプが詰まってしまうのか、原因はウイルス感染や免疫の異常などが研究されていますが、まだ完全には解明されていません。
2. 絶対に見逃してはいけない「3つの初期サイン」
この病気は、パパやママの「日々の観察」が発見の最大の鍵になります。以下の3つのサインに注意してください。
サイン①:白っぽい・薄い黄色のうんち(灰白色便)
胆汁が腸に届かないため、うんちに色がつきません。白、クリーム色、薄いレモン色、うすい灰色のようなうんちが出ます。
サイン②:生後2週間を過ぎても長引く「黄疸」
生まれたばかりの赤ちゃんは皮膚が黄色くなる「生理的黄疸」がよく見られますが、通常は生後2週間ごろには自然に薄くなります。生後2週間を過ぎても皮膚が黄色いまま、あるいは白目の部分がはっきりと黄色い場合は、必ず小児科を受診してください。
サイン③:濃い黄色や茶色のおしっこ (ビリルビン尿)
行き場を失った胆汁が血液中に逆流し、おしっことして外に出ようとするため、麦茶のような濃い色のおしっこが出ます。
💡 +α解説:怖い「ビタミンK欠乏」 胆汁が腸に流れないと、脂肪や「脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)」が吸収できなくなります。特に血を止める働きを持つ「ビタミンK」が不足すると、脳出血(頭蓋内出血)など命に関わる出血を起こすリスクが高まります。これも、早期発見が絶対に必要な理由の一つです。
3. 母子手帳の「便色カード」の正しい使い方
ここで大活躍するのが、母子健康手帳に綴じ込まれている「便色カード」です。
ただ、見方には少しコツがあります。
■明るい自然光(太陽の光)の下で見比べる!
夜の室内灯(とくにオレンジ色の電球色)の下だと、白っぽいうんちも黄色く見えてしまうことがあります。必ず明るい部屋や窓際で確認してください。
■「1〜3番」に近い色は受診!
便色カードの1番、2番、3番に近い色の場合は、胆道閉鎖症が疑われます。また、4番であっても「昨日より色が薄くなってきた」という場合は要注意です。
■受診時は「うんちのついたおむつ」の実物or 写真を持参!
スマホの写真でも参考になりますが、画面の明るさによって色味が変わってしまいます。実物のおむつをビニール袋に入れて持参していただくのが一番確実ではあります(乾燥しないように袋の口はしっかり結んでくださいね。また事前に持って行ってもよいか病院に確認を)。
4. 病院で行う検査と診断の流れ
小児科で「疑わしい」となった場合、専門的な設備のある医療機関ですぐに精密検査を行います。
超音波(エコー)検査・血液検査
赤ちゃんに負担の少ないエコーで、胆のうの大きさや形をチェックします。血液検査では「直接ビリルビン」という数値や肝機能の異常がないかを確認します。
超音波検査などの詳細は、以前の過去ブログ記事をご覧下さい👇️

肝胆道シンチグラフィ
ごく微量の放射性物質を含むお薬を注射し、肝臓から腸へ胆汁が流れているかを専用のカメラで撮影します。
最終診断(術中胆道造影)
ここまでの検査で強く疑われた場合、手術室で直接造影剤を入れて、パイプの詰まりを確認することで最終的な「確定診断」となります。
5. タイムリミットは「生後60日」?治療法について
胆道閉鎖症と診断された場合、基本的には外科手術が必要です。
葛西(かさい)手術(肝門部腸吻合術)
日本人が開発し、現在世界中で標準となっている手術です。詰まってしまった胆道を取り除き、肝臓から胆汁がしみ出ている部分に、直接自分の腸をつなぎ合わせて「新しいルート」を作ります。 この手術は「生後60日以内」に行うことが非常に重要です。手術が早いほど、黄疸が消えてご自身の肝臓のまま元気に成長できる確率が高くなります。
肝移植
発見が遅れてすでに肝硬変が進んでしまっている場合や、葛西手術を行っても黄疸が消えない場合などは、「肝移植」が必要になることがあります。
まとめ:毎日のオムツ替えは、赤ちゃんからのメッセージ
いかがでしたか?専門的なお話も含まれましたが、パパとママに覚えておいていただきたいのはただ一つ。
「うんちの色がいつもより薄い(白い)」「黄疸が長引いている」と思ったら、迷わず便色カードと見比べ、おむつを持って小児科へ行くこと。
「気のせいかもしれないし…」と遠慮する必要は全くありません。「何事もなくてよかったね!」で帰れるのが一番です。
毎日のちょっと大変なおむつ替えも、赤ちゃんからの大切なメッセージを受け取る時間。ぜひ、明日からのうんちチェックに役立ててくださいね🍎
※本記事は医学的な正確性を期して作成していますが、実際の症状には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず速やかにかかりつけの医療機関を受診してください。


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